Wi-Fiの通信規格って何?「11ax」と「11ay」について詳しく解説
Wi-Fiはスマートフォンの普及にあわせて、生活に欠かせない存在になりました。ビジネス目的やプライベート利用など、さまざまな場所で活用できる無線接続システムとして、今後さらに活用されていくものといわれています。
Wi-Fiに使われる通信にはいくつかの規格が存在し、それぞれについて特徴やメリットが異なります。どの規格も世界的に定められているもので、内容の違いを把握しておくことでさらに便利にW-Fiが活用できるようになります。
ここでは、Wi-Fiの通信規格のうち、最新の「11ac」と次世代の規格「11ax」「11ay」について詳しく説明します。
まずはWi-Fiについておさらいしよう
Wi-Fiは光回線などのインターネット回線とパソコンやタブレットなどの通信機器を繋ぐ中継地点であり、無線通信の規格の一種です。「Wi-Fi Alliance」という団体から認証されているため、団体名からとってWi-Fiと呼ばれています。
Wi-Fi通信が可能であることを示すためには、無線LANの接続方式である「IEEE 802.11(アイトリプルイー 802.11)」の規格に則っている必要があります。規格に沿って通信ができることが団体から認証されれば、製品に「Wi-Fi対応」と表示することができます。
Wi-Fiは無線LAN通信そのものを指す言葉としても知られていますが、標準規格であるIEEE 802.11は使用する周波数帯や通信速度に応じてさらにいくつかの規格に分かれていきました。
現在では、IEEE 802.11を軸に「IEEE 802.11a(11a)」や「IEEE 802.11b(11b)」などが生まれ、「IEEE 802.11n(11n)」と「IEEE 802.11ac(11ac)」が主流となっています。
Wi-Fiで使われている通信規格とは
通信規格とは
Wi-Fiで使われている通信規格は、IEEE 802.11を軸としてさまざまなバリエーションに分かれています。それぞれの規格が最大通信速度・周波数帯によって異なり、新しい規格が登場した後にパソコンなどの製品が追従し、それぞれの規格に対応しています。
現在のWi-Fiの通信規格は、周波数帯域や特長に応じて「11a」「11g」「11b」「11n」「11ac」の5つに分けられています。2019年1月時点でもっとも新しい規格が11acになります。
無線LAN規格は次々と新しいものに置き換わるので、古い規格はほとんど使用されなくなっています。11nは製品の価格が安い機器に使われていますが、価格を抑えずに11acのような高速通信に対応している製品もあります。
5GHz帯
無線LANは、2.4GHz帯と5GHz帯の二つの周波数を使用して通信を行ないます。5GHz帯は無線LAN専用の帯域であり、他の無線技術を搭載した機器と干渉しにくいため安定した通信が可能。
さらに5GHz帯は通信速度が速いので、動画再生や大きなファイルの転送も快適にできます。ただし障害物に弱いという特徴があり、建物の壁や家具によって電波が遮られると繋がりにくくなってしまいます。
現在主流の規格である11acは、無線の周波数に5GHz帯のみを使います。しかし11acに対応する通信機器の多くは、2.4GHz帯との互換性を維持するために両方の周波数帯が使えるようになっています。
2.4GHz帯
2.4GHz帯は、5GHz帯に比べ対応機器が多く、ほぼすべてのWi-Fi機器がこの周波数帯を使います。障害物にも強いため、屋内でインターネットに接続する際にも活躍。建物の壁や家具がある場所でも電波が届きやすく、Wi-Fiが途切れにくいのが特徴です。
2.4GHz帯の唯一のデメリットは、同じ周波数帯を使う機器が多いことによる混線です。街中に出てみると、ほとんどのWi-Fi機器がこの周波数帯を使っているので、速度が低速化し繋がりにくくなることがあります。
この問題を解決するために5GHz帯が使われているのですが、5GHz帯にもそれなりの短所というものがあるので、二つの周波数を使い分けるなどして工夫をすると良いでしょう。
最新の超高速通信規格「11ac」
「11ac」は、米国電気電子学会で策定された高速通信規格です。従来の11nの11.5倍もの高速化に成功し、次世代の通信を担う規格として注目されています。11nの10倍以上の通信が可能であるとして、すでに多くの製品がこの規格に対応しています。
11acの特徴は「帯域幅の拡大」「変調信号の多値化」「MIMO方式の拡張」の3点。11nの通信技術をさらに改善したことで、Wi-Fi通信がさらに高速になりました。
11acは5GHz帯のみを使うので、家電など2.4GHz帯を使う製品の影響を受けにくく、安定的に通信ができるという特徴があります。ただし障害物に弱い5GHzならではのデメリットも備わっているので、壁や家具など遮る物のない場所で通信を行なうなど、工夫が必要になります。
どうして「11ac」の通信速度は高速なのか
11acの高速化技術は「帯域幅の拡大」「変調信号の多値化」「MIMO拡張」の3点にまとめられます。
帯域幅の拡大については、道路でいうところの車線の多さにあたります。11aでは20MHz幅、11nでは40MHz幅のところ、11acでは80MHz幅まで拡大。2車線が8車線になると考えると、データの通り道がさらに拡がり、スムーズにデータが流れていくことが分かります。
変調信号の多値化は、一度に運ぶ情報量を増やして転送効率を向上させる技術です。11nでは6bitのところ、11acでは8bitまで増えました。この改善によって一度に運べるデータ量が増え、送受信効率がアップしています。
MIMO拡張は、電波を送受信するアンテナを増やし、一度により多くのデータを送る技術のこと。11nでは最大で4本のアンテナで送受信を行なっていましたが、11acでは最大8本のアンテナでの送受信が可能となりました。
Wi-Fiの高速通信を可能にするには、従来よりもデータの伝送をスムーズにしなければなりません。11acでは広い道を整備し、より多くのデータ量を運べるように整え、さらにデータの混信も減らしたため、11nの11.5倍もの高速通信が可能となりました。
「11ac」を使いたいときは端末の規格に注意しよう
11acがすぐれた通信規格であることはすでに述べていますが、11acの最高速度となる約6.93Gbpsで通信できる機器は、まだ一般向けにはほとんど市販されていないのが現状です。
現在11acに対応している機器は、周波数帯域最大80MHz、アンテナ1本の最高速度は約433.3Mbpsとなり、そのアンテナが1本以上搭載されているものです。
しかし11acに対応する無線LANルーターが売られても、パソコンやスマートフォンなどが同じく11acに対応していなければ高速通信を行なうことはできません。
11acを適用して完全な高速通信を実現するためには、無線LANルーターのほかにパソコンやタブレット、スマートフォンも11acに対応していなければなりません。まだ11nやそれ以前の規格にしか対応していない製品も多いので、11acという規格に各製品が追いついていくことがこれからの課題といえそうですね。
ただし11acは11a・11b・11g・11nなどの規格と互換性があるため、11acに対応していなくてもWi-Fiの規格を満たしている製品はすべて使用することができます。
2020年頃には高密度環境でも速度が落ちにくい次世代規格「11ax」が主流に
現在使われている11n、11acからさらに一歩進んだ「11ax」と呼ばれる規格も登場しています。
11axは11acをさらに高速化させる技術で、多くのユーザーがアクセスする高密度の環境下でも一人あたりのスループット(単位時間当たりの処理能力、実効速度)を4倍以上に高めることを目標にしています。
11axは混み合った環境でもスムーズに無線通信ができる規格なので、Wi-Fiの弱点の一つである混線とそれにともなう速度低下を解消することが期待されています。
また、11axは11acの速度以外の部分にも改善点を見出しており、2.4GHzと5GHzの両方での利用が可能。現在は標準化が進められている最中で、2019年中にすべての標準化が完了予定。2020年頃には一般のユーザーにとっても主流になると予想されています。
製品としては、11axに対応した無線LANルーターがすでに実用化されています。来年までに超高速通信が一般的になるということで、次世代規格ならではの機能に注目していきたいですね。
60GHz帯を使う新通信規格「11ay」にも注目
現在、将来の無線LAN通信を担う新たな規格として「11ay」が登場、標準化に向けて動き出しています。
11ayは未開拓の周波数帯である60GHzを使用するもので、最大転送速度は100Gbps以上。超高速次世代規格として、2020年頃の実用化を目指しています。
11ayでは、複数のチャネルを同時に利用する「チャネルボンディング技術」によって、100Gbpsという驚異的な速度の通信が可能に。
スケジュール通りに2020年頃に11ayが実用化されれば、学校の教室や公共交通機関の社内のモニター、展示会などさまざまな場所で動画や映像データが使えるようになり、一般のユーザーはさらにスムーズにインターネットへの接続ができるようになるとされています。
100Gbpsでも十分に高速通信といえますが、将来的には1Tbpsでの通信も検討中。11ayはさまざまな可能性をかたちにする高速通信への道を拓いてくれることでしょう。
「11ax」と「11ay」の違い
11axはすでに実用化され主流となっている11acの上位互換の規格です。11acをさらに高速化させた技術で、最大速度は9.6Gbps。すでに標準化はされているものの、この規格を取り入れている通信機器はまだそれほど多くはありません。
11axは5GHz帯のほかに2.4GHz帯にも対応しており、一つ前の11acが5GHz帯しか使えない点を踏まえて改善されています。さらに複数台のアクセスポイントを使って通信することも可能で、同じ周波数の電波を複数の子機(スマートフォンなど)が利用できるようになりました。
マンションなどの集合住宅では入居者が同時に通信を行なうと電波の混雑が起きてしまいますが、11axの技術を使えば複数の端末が同時に通信できるので、混線状態でもスムーズに通信ができるようになります。
11ayは従来の周波数帯ではない、新たな60GHz帯を使った通信規格です。この周波数帯は免許不要で無線機器を自由に搭載でき、基地局を誰もが設置・利用できるので、無線通信環境をさらに拡げてくれる周波数帯となっています。
例えば動画・映像・画像などといったデータを大容量データとして一括転送したり、屋外・屋内を問わずさまざまな機器からデータを1ヶ所にアップロードし、そこから自由にダウンロードするための技術として期待されています。
11axは混線状態でもスムーズに接続・通信できる規格ですが、そのさらに上を行く超高速次世代規格が11ayになります。
「11ax」と「11ay」についての口コミ
スマートフォンの多くは、 5GのみならずWi-Fiも最新の802.11ax(Wi-Fi 6)に対応することが見込まれています。 海外のスマートフォンメーカーのウェブサイトでは、 Wi-Fi 6を採用したフラッグシップ機の発表が始まっています。 「Nighthawk AX8」 の発売は、 早晩主流となることが見込まれる
— 柳村俊春 (@To_shi_zo) May 5, 2019
テレビ東京で時代の変わり目ってことで5Gに触れてたけど、5Gや802.11axが普及したらほんとに色々変わるだろうな~
— こじ (@koji09y) April 30, 2019
Snapdragon 855からIEEE 802.11ay対応なのね。これで?でwifiがまともに使えるようになる、といいな。
— TOKYO-2 (@Tokyotwo) December 6, 2018
まとめ
Wi-Fiのベースとなる通信規格が誕生してから、数年ごとに新しい規格が登場し、通信技術は日々飛躍的な成長を遂げています。
すでに11ayを利用した計画が進みつつあり、無線機器を街中や屋内などさまざまな箇所に設置して同時通信やリアルタイム通信を可能にし、人工知能との連携なども検討されており、ますます無線通信が身近なものになっていくと考えられます。
現時点では11acや11axなど、可能な範囲での高速通信と混線状態でのスムーズな通信が実用化されつつありますから、今後のさらなる発展に期待したいですね。
1位 GMOとくとくBB
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3位 Broad WiMAX